gajikuのコラム


このページは、幼稚園内の絵画教室でお配りしている手紙を掲載しています。絵画教室で行っている内容、感想など、毎月お渡ししている手紙の一部になります。


2019年 ー美術って何?ー

 

美術の「美」は、「羊が大きい」と描きます。中国から伝わってきたのですが、昔中国では羊が大きいと、羊毛がたくさん取れる事によって衣服が沢山作れ、羊肉が沢山食べれて人々が豊かな暮らしを送る事ができ、人々がより豊かな生活が送れるようになることを「美しい」という漢字で表しました。

「美しい」と「豊かさ」

きれいと美しいを混同しがちですが、美しいとは人間が豊かに暮らせることを意味する言葉であり、汚いものに美しいものもあれば、きれいなものでも美しいものでは無いものもあります。美術とは人の生活を豊かにするもので、実は現代社会の中に必要不可欠な要素でもあります。日本の教育の中では、警察署に行っても美術館にはあまりいく事がありません。美術館が少し遠いという事もありますが、描く教育は盛んに行われていても、美術作品を見る教育までなかなか行き届かないのが現状です。観る事でしか身につかない事も多いため、おやすみなどを利用してぜひ美術館などに足を運んでみてください。きっと子どもたちの絵にも、その後の制作活動にも、多くの豊かさを与えてくれるのではないでしょうか。

 


ー2021年3月のお手紙(風景構成法について)ー

 

3月は風景構成法という課題を行ってもらいました。風景を描くのに大事な要素10個 山、川、田、道(大景群)家、木、人(中景群)花、動物、石または岩(近景群)という距離の遠いものから近いものへ順番に描いてもらい、最後に自分なりに好きなものを足し、色をつけて風景を完成させてもらう課題です。

 

これは、カウンセリングなどのアートセラピーでよく用いられる課題で、「箱庭を作る」ことから着想を得ています。これを描くだけで気持ちが落ち着くといったことがある場合もありますし、またそれとは別に、風景の構成を学ぶ課題としても用いられています。

 

描いている絵をみながら、絵の中に現れた季節や時間、川の流れ方などを聞いたりもします。「この人はだれ?この絵のなかは何時頃?この川はどっちからどっちにながれてるの?」など、コミュニケーションをとりながら内側にあるものを表に出してもらいます。年齢を重ねれば重ねるほど内側を隠してしまい、奥底にある内面は出にくくなってきますが、小さいお子さんほど素直に描く事ができるようです。

 

また、ここでは内容の良し悪しに関しての判断はしません。内面をそのままを受け止める作業をお互いにしていければ理想的です。

 

10個の要素を順番に描いていくだけの簡単な課題なので、ご自宅でも遊び、コミュ二ケーションの1つとして行ってみると楽しめるかもしれません。画材は、大人や大きいお子さんは黒いマジックで線を描き、色鉛筆で着色、小さいお子さんはクレヨンやクーピーなど身近な画材を使う事でより気軽に描けるかもしれません。

 


ー2019年11月のお手紙(葉っぱを大きく描く)ー

 

11月は紅葉の季節という事もあり葉っぱを描く課題を毎年行なっています。小さな子どもたちは1枚の葉っぱを大きく描き、隣り合わせの部分は色を変えながら仕上げてもらいます。隣り合わせの色を変えるとき、出来るだけ色を混ぜ、自分なりの色を作りながら描いていくことに注意します。

大きく葉っぱを描く場合は、色感を養うことを目的に描いてもらいますが、少し年齢を重ねた子どもたちには、形の見方を学んでもらうように、いろいろな葉っぱを描いてもらう事もあります。その葉をよく観察して描いていくのですが、この時、五感で感じながら描く事が大切で、見て、触って、擦り合わせたりして音を聞いてみて、匂いを嗅いで、私が学生の頃は、口に含んで噛んでみて描く事もよく聞きました。(教室では口の中にまで入れることは衛生上、またアレルギー等の問題もある為しませんが、興味のある方はご自宅で試してみるても良いかもしれません。)手で触ることなどは、硬さなど目では追いきれない指から伝わる感覚を絵に反映させるためで、口に入れて噛んでみると、触ったのとまた違う感覚を口の中で感じる事ができます。これは赤ちゃんが何でも口に入れてものの感触を確かめるのに通じる部分もあります。すべての感覚を通して感じたもの、その描いている植物がどんな木なのかなど特性を知り理解を深め、それらを絵にしていく事は、よりリアルな絵を描くことに結びついていきます。

美術教育の中心にあるのは、描き方を学ぶのではなく、ものの見方を学んでいく事が中心になりますが、この葉っぱを描く課題でも、より深い理解から自分が感じたことを自分の描き方で表現する事で、それぞれのとても豊かな葉っぱが出来上がっていました。

※課題は毎年行うもの、1回だけのものと様々ですが、毎年行うものは、課題の捉え方やものの見方が変わり、また、数を重ねる事で理解がさらに深まることを期待しつつ、子どもたちの成長がよりわかりやすくみて取れる事もあり、ご家族で楽しんでみてもらえると、と願っていますー。

 


ー2020年1月のお手紙(木の板に絵を描く)ー

 

1月の教室では、絵馬または、パズルのような形をした木の板に描いてもらいました。ここでは、

 

①支持体を変えることで普段描いているのとは違った手への感触を経験する。今回は木に描いているため、あまり力を入れ過ぎると木目に描画材が引っ掛かり、描きにくく、筆圧を調整しながら描くことを経験していく。マジックは大きいお子さんしか使いませんが、これも筆圧が強いとマジックの先がすぐに潰れて使えなくなるため、手加減が大切になることを経験する。

 

②絵具を使った場合、支持体への染み込み方や、絵具の乾き方が違ってくるため、水の量の調節をより意識する事ができる。

 

③文字や数字を絵に変えて描いてみる。文字を言葉ではなく、イメージとしても置き換える練習をしてみる。

 

④少し大きいお子さんは、願い事を完成形で願ってみる。例えば、「サッカー選手になりたい」という願い事は、「なっていない自分」を同時に願っているため「将来はサッカー選手!」など、言い切った完成形で願う。「交通安全」「家内安全」なども完成形の一例。身近なメンタルトレーニングとして願い事をしてみる。

 

毎年1月に行っている課題ですが、例年絵馬を作っていたので、2回目以降の子どもたちはパズルのような形をした木に描いてもらいました。四角ではない形に描く事も、普段とは違った工夫が必要になります。そんなちょっとした変化に抵抗を感じている子もいたようですが、それぞれの関わり方で楽しんでくれたらと願っています。

 


ー2019年12月 (工作について)ー

 

工作は多くの子どもたちにとって楽しい課題になります。普段絵を描き慣れてくると、絵の具やクレヨンとは違った手に伝わる感触をより楽しむ事もできるようになります。絵を描くことは「自分自身の内面との対話」であるのに対して、工作は「素材との対話」が大切な部分になります。小さなお子さんは扱える素材や道具が限られる為、沢山の素材を行うことは難しいですが、できるだけ様々な種類の素材に触れると良いのではないかと思います。

11月または12月に行なった「クリスマスツリーを作ろう」では、「かる〜い粘土」を使って形を作ってもらいました。(できなかった方すみません、、また近々粘土を使った工作をする予定です)この粘土はあまり時間をかけ過ぎると乾いてボロボロと崩れてきてしまう為、手早く形作る事が大切になります。旧来からある重みのある紙粘土も乾く性質は同じで、やはりある程度のスピード感が必要になります。その代わり乾けば固まり、着色が出来たり、ボンドなどで上からいろんなものがつけられます。反対に油粘土は、ほとんど乾いていかない為、練り心地を長い間楽しむ事ができ、作品の保存には向かないのものの、手に伝わる感触は独特の刺激を脳に与えてくれます。油粘土の感触が好きな子には紙粘土のスピード感は少し難しく感じる事もありますが、そんな思い通りにならない「素材との対話」を通して、素材とどう向き合うか、自分の思い通りないならないものを目の前にどう楽しむか、といった経験を積み重ねる事は、どこか人とのコミュニケーションをとることと通じるものもあるのでは、、普段の生活でも、目の前の出来事の受け取り方や考え方にちょっとの変化や幅がもしかしたら持てるかも、、と工作を時々挟んでいます。

1月の教室では「絵馬」を行う予定です。大きなお子さんは「完成形でする願い事の仕方」などもお話をするのに加え、支持体が紙から木に変わる事で絵の具を使えば染み込み方が違い、クレヨンでは伸びが違い、いつも使っている道具なのに、いつもと違う使い方をしたり、少し工夫しながら描いていきます。